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​人差し指

真っ白なカンバスの上、蒼い時間が終わり、
夕立が通り過ぎた後。
王は自分の墓を探していた
私は王だ、どこかに必ず大きく立派な墓があるはずだ。
だかしかし、はたと場所が思い出せない。
自分がどのように生きて、どこに住み暮らしていたのか、
友人や家来はどうだったのか検討もつかない始末であった。
思い出せることといえば
ローマンコンクリートの壁、インディゴの海
マッコウクジラの胆石の臭いとガリバーのかゆみ
そして何かに押されたような背中の感覚だけだった。
しかし、あたり一面はデボン紀の海のようで、
散らばったあらゆる記憶の断片があちらこちらに広がっていた。
考えあぐねいていると、ひらひらと手のひらが現れた。
華奢な女の人差し指が何かをゆびさしている。
周りには私の記憶を頼りに出来ているものだから、
まるであいまいで、その人差し指に従いついていくほかなかった。
誰かに指図をされるようで癪に障るが、
その指はまったく丁寧なそぶりで誘うのだ。
どうやらレンガ作りに覆われた、一つの窓を指し示している。
果たしてそこに墓があるのだろうか?

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